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竹工芸を支えて百年以上。良質な竹材をつくり続ける「永井製竹」

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竹工芸を支えて百年以上。良質な竹材をつくり続ける「永井製竹」

別府温泉の総鎮守・朝見神社近くを流れる朝見川沿いに突き出た2本の煙突と、数十本もの竹が立てかけられた印象的な建物があります。そこは、別府で唯一、日本でも数少ない製竹所「永井製竹」。 100年以上にわたり、竹工芸の職人たちを支え続けてきたこの場所では、竹細工の原点ともいえる竹材加工が行われています。竹工芸になくてはならない竹材加工の技術とそれに向き合う人々の熱い想いをお伝えします。

⽵⼯芸に⽋かせない「伐り⼦(きりこ)」

⼤分県はマダケの⽣産が⽇本⼀。⽵林は⼭間部にあることが多く、夏冬の寒暖差が激しいため、硬く締まった良質の⽵が多いといわれています。⽵は新しすぎると⽔分が多すぎて柔らかく、古すぎる場合も加⼯に向きません。加⼯に最適な3〜4 年ものの⽵を⾒極めるには、⻑い経験を要するそうです。15m以上もある⽵を⼭の斜⾯で伐り、運搬するのは重労働。これらの仕事を担っているのが、「伐り⼦」と呼ばれる⼈たちです。

現在、永井製⽵に⽵を納める伐り⼦さんは1⼈で、農家と兼業されているとのこと。管理する⽵林がいくつかあり、ローテーションで伐っているそうです。重労働であることなどから後継者がなく、永井製⽵だけでなく他の地域でも、切り⼦さんは⾼齢化し、⼤きく減少しているそう。⽵林はあっても、それを伐り、管理する⼈がいないことで、⽵材の不⾜だけでなく、⽵林の荒廃なども⼼配されます。

別府で唯⼀残る「製竹所」

伐り⼦さんから持ち込まれた⽵は、⽵⼯芸⽤の「⽩⽵」に製⽵するため、「油抜き」が⾏われます。⽵を紫外線から守り、防⾍の役割も果たしている⽵の油。伐り出した後に油抜きをせず放置すると、油が茶⾊く変⾊し⽵が腐ってしまうそうです。陶芸の登り窯のような構造の釜「湯釜」で⽵を15 分ほど煮沸したあと、⽵の表⾯に浮き出た油を拭き取ります。マダケは1回、油の強いモウソウチクはこの作業を繰り返し2回。釜の⻑さは 6mと8mですが⽵の⽅が⻑い場合は、⼀⽅を煮沸したら釜から抜き出し、反対側も同様に煮沸・拭き取る作業を⾏います。 10mを超える⽵は重く、⼤変な作業。川辺の製⽵所、湯釜のある場所は、屋根はあるものの、ほぼ屋外です。夏は暑さ、冬には寒さも加わり、さらに過酷な作業となります。

湯釜を使う「湯抜き」が考案される以前は、⽯炭を燃やし⽵の表⾯をローストビーフのようにあぶる「⽕抜き」と呼ばれる⽅法が主流だったとのこと。⽕抜きすると⽪の表⾯にツヤが残るため、今でも⾼級茶せんなどはこの製法が⽤いられることがあるそう。油抜き後の天⽇乾燥も重要な⼯程です。油抜きだけでは湿気でカビたり乾燥で割れたり、⾍に喰われたりするため、天⽇⼲しでそれらを防⽌しています。⽵は煮沸、拭き取る、そして乾燥することで、⽩い象⽛のような美しい⽵材になるのです。

異⾊の経歴を持つ現社⻑

2024 年12 ⽉現在、永井製⽵の従業員は 13 名。全盛期には 120 ⼈ほど働いており、原⽵を売りに来る⼈が順番待ちをするくらい活気があったといいます。現在、湯釜を守り社⻑業、財務・経理、商品開発、広報も兼任しているのが、茶重之さんです。東京で 20年以上ファンドマネージャー、証券アナリストとして活躍し、5年間の⼤⼯経験を経て、2017年に永井製⽵に⼊社しました。

「東京で、別府⽵細⼯の教室に通っていました。材料が⾜りないという問題を⽿にし、じゃあ⾃分が伐り⼦になろうと思ったのです。でも伐り⼦は断られてしまい、ここにやってきました。『湯釜だけをやるのだったら⼊社 OK』との条件をもらい、勤務がスタートしました。⼤⼯の経験もあったから楽勝かと思ったら、とんでもなくきつくて。でも徐々に体ができてきて、腹筋も割れて筋⾁が付き、仕事ができる体になりました。

よく、社⻑さんが何故、湯釜をやっているのですか?と聞かれますが、湯釜で⼊社した⼈が、1年後に社⻑になったのです。」最近では、若い⼈たちが油抜きをお⼿伝いしてくれることもあり、しっかり仕事として対価を払い、存続してもらいたいと考えているそうです。「とにかく、湯釜は『⽵の湯地獄』です。」と笑いながら、近況を語ってくださいました。

「全国的にも、製⽵所はどんどん廃業しています。別府市内でも6年前、東⼭にあった製⽵所がなくなり、次いで⻲川にあったところもなくなってしまいました。昔は、製⽵と製造の両⽅を⾏う場所が 4〜5 ヶ所、製⽵だけの施設も 3〜4 ヶ所はありましたが、もうありません。全国から⽵材の注⽂が来ているので、お客さんには順番待ちしてもらっています。栃⽊や千葉、⻑野からの注⽂もありますが、輸送費も上がって⼤変です。油抜きした後、天⽇⼲しの⼯程だけ⾃分でやってもらえる⼈には少し早めに渡すなど、なんとか⼯夫しています。」

希少な作業を間近で⾒る「製⽵所⾒学」

⽵材だけでなく、⾃社商品の製造・販売も⾏う永井製⽵。モウソウチクをコップやお⽫、どんぶりなどに加⼯したり、⽇本料理に使う伝統的な器なども製造しています。⼤根おろし、電⼦レンジで使える炊飯器、デザイン性の⾼いコップやぐいのみ、グラス、スピーカー、ターナーなど。若い⼈にも使ってもらえる製品を次々と考案し販売中です。

たくさんの⼈に知ってもらいたいとの思いから、外国⼈や観光客の⾒学、⼩学⽣の社会科⾒学も受け⼊れています。社⻑の軽妙なジョークが飛び交い、楽しい⾒学ができると⼤好評。⽵の節の空気が爆発し、パンパンパンという⾳が鳴る「本物の爆⽵」が⾒られるかもしれません。普段⾒られない光景が広がる製⽵所⾒学、おすすめです。

永井製竹株式会社

〒874-0930 大分県別府市光町3-15
Tel: 0977-24-0417
※受付時間:午前9時~午後5時まで(土日祝日休業)【⾒学お問い合わせ】
永井製竹株式会社へ直接お問い合わせください
公式サイトはこちら

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